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湯川潮音
 
ユカワ シオネ

自らの名前を冠した
1stアルバム『湯川潮音』が完成。
季節や情景をイメージさせる
10の楽曲に秘められた
彼女の新たな可能性を探る。

ンディーズでの活動を経て、昨年8月に『緑のアーチ/裸の王様』でメジャー・デビューしたシンガー・ソング・ライター湯川潮音。その柔らかな歌声とオリジナリティーのあるメロディーで注目されている彼女が、自らの名前をタイトルにしたメジャー1stアルバム『湯川潮音』をリリースした。デビュー・シングルに収録されていた「緑のアーチ」(ハナレグミの永積タカシが作曲)や「裸の王様」(くるりの岸田繁が作曲)、11月にリリースした2ndシングル『蝋燭を灯して』のアルバム・ミックスを始め、個性的な楽曲が収録されている。
 彼女の楽曲からは四季の変化や情景が浮かんで来て、曲のイメージをどんどんと広げてくれる。メジャーとして初めてのアルバムとなる今作では、プロデューサーに鈴木惣一朗を、そしてミックスエンジニアにZAKを迎え、これまでのサウンドとは一味違ったアプローチにもチャレンジしている。今回のインタビューでは各曲について聞いたが、どんなチャレンジがあったのか、このアルバム制作を通してどんな変化や成長があったのかを詳しく語ってくれた。
(取材・文/田中隆信)

Video Comment
湯川潮音
湯川潮音からのメッセージ!
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湯川潮音

オフィシャルサイト

レーベルサイト

アーティストデータ

前回のインタビュー
(2005.08.02 掲載)
New Release
『湯川潮音』
New Album
『湯川潮音』

発売日:2006/01/25
TOCT-25889
価格:¥2,500(税込)

■収録曲
01: 渡り鳥の3つのトラッド
02: 鏡の中の絵描き
03: 裸の王様(Album mix)
04: HARLEM
05: 蝋燭を灯して(Album mix)
06: 聖堂の隅で
07: 緑のアーチ(Album mix)
08: 海の上のパイロット
09: エデンの園(Album mix)
10: キルト

Interview
湯川潮音 インタビュー

Excite: 1stアルバム『湯川潮音』が、いよいよリリースされますが、すごく中味の濃い内容になりましたね。

湯川: はい、そうですね。

Excite: タイトルは『湯川潮音』となっていますが、これは悩みましたか?

湯川: 悩んだようで、悩んでない…というか(笑)。"自分で曲を作り始めてから今に至るまで"をまとめたような作品にしたいと思っていたので、1stアルバムの名前は、どこか憧れみたいなものもあったんです。出来上がった内容からタイトルを考えたら、「これしかないんじゃないかな?」という気になりましたね。

Excite: ある意味、自然な流れで決まったタイトルといえる感じなんですね。

湯川: そうです。後から考えてみたら、自分の名前には、水に関する要素が沢山含まれていて。今回、曲についても、水辺だったり、ちょっと霧がかかっていたりするので、アルバムの内容にも合ってるんじゃないのかなと思いました。

Excite: 確かに、"湯""川""潮"が水に関係していて、"音"は音楽を表していますからね。

湯川: そうなんですよ。最初は「HARLEM」という曲のタイトルがインパクト大きかったので、『HARLEMの向こうに』なんていうのも良いかなって思ってたんですけど、最終的に『湯川潮音』に決めました。

Excite: どんなアルバムにしようと思って制作に臨みましたか?

湯川: 「ずっと長く聴いてもらえるアルバムにしたいな」って思ってました。その為の音作りをしたつもりです。私自身も、好きなアルバムってジャケットごと持ち歩いたりしてるんですよね。そういう感覚のように、いつも人の傍にいられるような作品が作れたら良いなって。

Excite: 長く聴いてもらえて、いつも傍に置いてもらえる作品を目指したんですね。アルバムには10曲収録されていますが、新しい曲もあれば、古い曲もあったり。

湯川: はい。「海の上のパイロット」という曲は、17歳とか18歳の時に作った曲なんです。作った当初は、歌詞が全然違ったんですよ。以前、プロデューサーの鈴木惣一朗さんに、お会いして聴いてもらったことがあったんですけど、鈴木さんがこの曲のことを覚えてて、「今回のアルバムに、あの曲を入れよう」って言ってくださったんです。それで、歌詞を全部書き直して入れたんです。

Excite: 鈴木さんとしては、「いつかキチンと形にして出したい」と思ってたんでしょうね。

湯川: そうですね。いつも、一度出来上がった曲を少し崩すということが出来なかったんです。今回も、割と悩んだんですけど、もう4年くらい前の曲なので客観的に見れたところがあったので、新たに作り直せたんだと思うんですよ。やっぱり、「今の言葉で歌いたい」って思いましたし。

Excite: 作ってから半年とか一年以内の曲を作り直すことの方が、難しかったりするんですね。

湯川: そうなんです。ある程度時間が経過しないと出来ないですね。

Excite: 10曲それぞれが個性的な楽曲なので、1曲ずつ聞かせてもらいます。まず、1曲目の「渡り鳥の3つのトラッド」から。この曲は、"アルバムの始まり"を感じさせてくれる曲だと思ったんですが。

湯川: そうですね。私の曲って、春夏秋冬の移り変わりからイメージを広げて作ることが多いんです。それで、アルバムの最初に、四季が詰まった曲を持ってきたかったんですよ。季節が変わって行くことの喜びもあるし、逆に切ない気持ちもあって、その二面性が存在してることがアルバム全編において共通していることだと思います。

Excite: 作ってる最中から、これが1曲目だと決めてたりしてたんですか?

湯川: なんとなく、そういうイメージはありました。

Excite: 2曲目は「鏡の中の絵描き」ですが。

湯川: この曲は、ムーミンを読んでた時にイメージが広がった楽曲なんです。

Excite: ムーミン!?

湯川: はい(笑)。物語の中に、「手に入れようとせずに、見つめるだけにしておいた方が良いよ」っていう好きなセリフがあるんですけど、それがずっと心の中に残っていて、歌詞を書こうと思った時に、そこからイメージが生まれて来たんです。サウンドのイメージとしては、はじめは、「くるみ割り人形」みたいなバレエっぽいイメージがあったんですけど。

Excite: 現実にない、架空の世界がきちんと出来上がっている歌詞ですね。

湯川: 手に届きそうで届かない、鏡が一つ挟まっている感じはあると思います。

Excite: 次は、くるりの岸田(繁)さんが作曲をした「裸の王様」。

湯川: 初めに詞をお渡しして、イメージを伝えました。その詞に、岸田さんが曲を付けてくださって戻って来たんです。そこから歌詞を多少書き直して完成させました。

Excite: そうやって出来上がった曲だったんですね。岸田さんに付けてもらった曲を初めて聴いたときの印象は?

湯川: すごく力強いメロディーだなと感じました。岸田さんのイメージに近いと感じたし、メジャーから初めて出す曲で、自分自身も前に向かう力が強い時だったので、気持ちとすごく重なりました。なので、歌詞を書き直すのもスッと出来ましたね。人との出会いによって新しいものが生まれることは素晴らしいことだと思いますし、刺激にもなりました。

Excite: 次は「HARLEM」ですが、先ほどもタイトルが印象的だと言っていた曲ですね。

湯川: はい。ホントに、赤裸々な歌詞だなって自分では思うんですけど、タイトルが付いたのは最後だったと思います。ものすごく色々な意味が含まれていて、"自分だけのハーレム"っていう意味合いが一番大きいんですけど。人と人とが近くなって重なりそうなときに、"ここからは入れない"っていう領域を持っている現実に直面した時の曲なんです。それが悲しくもあり、逆にその距離が愛おしくもあるっていう。ハーレムって、一見すごく煌びやかなんだけど、ちょっと切ないなって…。「それが本当に幸せなのかしら?」って、そんなイメージが浮かんで来たんです。

Excite: 華やかな場所にいても、その中心にいる人は、実は孤独を感じてたりすることもあるんでしょうね。

湯川: そう思いますね。この歌詞に関しては、あまり言いたくないことを敢えて言ったという感じはあります。実体験から生まれた歌詞なんですけどね。

Excite: 次は「蝋燭を灯して」。

湯川: これは、初めて歌詞を最後に書いた曲で、ニューヨークでレコーディングをして来ました。ジェームス・イハさんと作った曲なんですけど、敢えて日本で歌詞を書かかず、向こうへ行ってから書いたんです。

Excite: 敢えて、何も持たずにニューヨークへ渡ったと。

湯川: はい。せっかくニューヨークに行くんだから、「新たな気持ちで作れたらなぁ」って思いました。イハさんに何曲かデモを頂いて、その中から一曲を選んだんです。それに乗せる歌詞を考えていた時に、そのメロディーの続きが浮かんで来たんですよ。それが加わって一曲になるような気がしたんですね。それでイハさんに「こういう続きが出来たんですけど、どうですか?」って、聴いてもらいました。それをイハさんが気に入って下さったので、こういう形になったんです。

Excite: それで、作曲が共作になってたんですね。歌詞はニューヨークで作ったということですが、環境が違えば発想や生まれてくるイメージも違ったりするんじゃないかと思うんですが、実際にはどうでしたか?

湯川: ホントに何もかも新しい環境で、自由にやれました。高校生の時にジェームス・イハさんのアルバムを聴いてファンになったんですけど、全曲、愛についての曲なんですね。今まで自分が愛について赤裸々に書けなかったので、良い影響を受けられるかなって思ったんですね。いつも誰かと一緒に作る時は、何か影響を受けたいと思ってますし、今回はそういう「愛してる」じゃないですけど、それに近いことが言えるんじゃないかなって。

Excite: せっかく一緒にやれるのであれば、影響や刺激を受けないともったいないですからね。

湯川: そうなんですよね。すごく刺激も受けて来ました。

Excite: 次は「聖堂の隅で」ですが。この曲はコーラスがすごく印象的でした。

湯川: そうですね。10年間合唱をやってたんですけど、その時の回想っていうのが大きく影響した曲ですね。子供の頃、世界中の教会でミサを歌ってたりしてたんですけど、朝六時とかだったので、すごく眠いんですね(笑)。私がウトウトしてる中、周りの友達は歌ってるわけじゃないですか。その声がすごく清いんだけど、怖く聴こえたりもしたんですよ。そのイメージで、コーラスを入れたかったんです。ちょっと夢と現実の境目を、ウトウトしてる時の思い出ですね。

Excite: 教会や聖堂の中の空気って独特なものがありますから、そういう夢と現実が曖昧な感覚っていうのも生まれ易いのかもしれないですね。

湯川: そうですね。独特な空気はありますね。教会の中に一歩入れば、実際はそうじゃないのに霧がかかったような、ヴェールがかかっているような感じがして。この曲のサウンドにも、そういったイメージが出てると思うんです。

Excite: そんなイメージは、ありますね。次は「緑のアーチ」。ハナレグミの永積タカシさんが作曲された曲ですが。

湯川: この曲は歌詞から書いたんですけど、永積さんは、一個一個の言葉まで、どんな気持ちなのかを丁寧に考えて作ってくださったので、親近感がものすごく出て、出来たときも人に作ってもらった曲っていう感覚がなかったくらいだったんです。暖かいメロディーだったので、「抱きしめて」とか、今まで言えなかったんですけど、永積さんのメロディーだったら言えるかなって。

Excite: ここでも良い刺激と影響を受けたんですね。

湯川: はい。ライヴでもたくさん歌うようになって、「抱きしめて」とか、素直に言った言葉がひとつでもあると、すごく放たれる感じがあるんですよ。この曲以降はそういうことが自然に出来るようになったので、開かれたという感じはありますね。ひとつのキッカケを与えてくれた曲でもあります。

Excite: 次の「海の上のパイロット」は、先ほども少し話してもらいましたが一番古い曲で、歌詞を書き直したということですが、どういった部分が大変でしたか?

湯川: 「どこにいても、溺れて行くしかなかった」っていう絶望的な部分は前の歌詞にもあって、ここはメロディーと一緒になっていたので「崩すことはしたくないな」って思いました。なので、どこかしら「絶望を含んだ曲になるだろうな」とは思っていました。タイトルも変わったんですよ。最初は「夕焼け」でしたから。

Excite: タイトルも変わったけど、"絶望"というキーワードだけは残ったんですね。これも新しいチャレンジの曲でしたね。

湯川: はい、そうですね。

Excite: 次は「エデンの園」ですが、これはどんなイメージから作った曲なんですか?

湯川: 一歩踏み込んだラヴ・ソングというイメージですね。少し深い部分の男女かなあ。(笑)

Excite: こういう内容の歌詞も、今だから書ける歌詞だったりするんじゃないですか。

湯川: そうですね。この曲は、ジェームス・イハさんと仕事が出来るって決まった時に、パッと作れた曲なんです。イハさんのソロ・アルバムを意識して作りました。思った以上にイハさんが気に入ってくださって、「ビートルズみたいだ」って(笑)。

Excite: 影響を受けたアーティストに、気に入ってもらえると嬉しいですよね。

湯川: ホントに、イハさんの音楽を想って作った曲なので、嬉しかったですね。

Excite: 最後は「キルト」ですが、歌詞は短いんですけど、言葉の数以上のものが伝わって来る印象を受けました。

湯川: この曲はすごく直感的な歌というか、女性的な霊感部分のことを歌いたくて。それって言葉じゃなくて、「アー」とか何も意味のない言葉で表現したいなって思ったんです。アルバム全体を通して、出会いが要になって生まれた曲が多く、直感で成り立ってることが多いので、それに対する敬意っていう意味も大きいんです。そもそもこの曲は、アート・ディレクションやジャケット、衣装をやってくれてるeriさんの、chicoっていうブランドがあるんですけど、その展示会の為に書いたんです。映像と音楽と洋服で何かを作らないかってお話をいただいて、初めは「chicoの歌」っていう曲だったんです。

Excite: じゃあ、タイトルは最後に決まったんですね。「キルト」というタイトルが出て来たのは、どういったところからなんですか?

湯川: 「キルト」って何代も紡いでいくもので、人から人へと伝承されて行くものっていうイメージがあって、そういうものに惹かれるんですよね。ずっとトラディショナルな音楽を歌ったりしてたのも大きいと思います。そういう伝承されて来たものって、人の生活に溶け込んでるんですね。手作業をしていても、自然と鼻唄で出てしまうような歌、そういうものを作りたいと思っていますから、「キルト」っていうイメージに近いんじゃないかなって思ったんです。

Excite: アルバム全体のイメージにも当てはまるタイトルでもありますね。

湯川: そうですね。

Excite: このアルバムの制作を通して、どんな部分が変わったと思いますか?

湯川: 「HARLEM」っていう曲を作れたことが一番大きいんじゃないかと思います。ニューヨークでイハさんと曲を作って、自分の声が意外とギターにも合うって思っったので、それ以降は曲作りをする時にもエレキギターの音が頭の中に鳴るようになったんです。「HARLEM」という曲もその一つで、今後に繋がる曲なんじゃないかなって思うんですよ。

Excite: 改めて聞かせてもらいますが、全10曲入りの1stアルバム『湯川潮音』はどんな作品になりましたか?

湯川: 全体的なサウンドとしては、すごく不思議な感じがしていて、掴めそうで掴めないっていうか、聴くたびに表情を変えるんですね。録音中の小さなノイズも含めて、あらゆるところに面白い音があるので、「あ、こんなところにこんな音があったっけ?」って発見もあります。長く聴いてもらえる作品になったんじゃないかなって思いますね。

Excite: 2006年がこのアルバムからスタートします。どんな年にしたいと思っていますか?

湯川: とにかく続けて行きたいと思っています。何においても、続けることに意味があるなって思いますから。

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